2018年6月に開講して5億円集めた講座は2020年末で強制終了となった
いま、コロナ禍にあって在宅での副業を探している人を狙って「安易な儲けばなし」の一つとして翻訳業を勧め、「簡単に翻訳者になれて高収入を得られる」と宣伝して生徒を集める「翻訳学校」が業界内で問題になっています。(参考:日本翻訳連盟からのお知らせ [2020年12月11日付])最初に問題が発覚した講座は2018年6月に開講し1500名を超える会員を集め5億円にものぼる資金を集めたことをご存じでしょうか?その後、業界で評判が悪くなり社名変更したものの悪評は止まず、結局一部受講期間を残したまま返金もされない人もいるのに強制的に2020年末で講座が終了したことはご存じですか?
最初の講座がなくなったことはご存じの方も多いかもしれませんが、同じやり方を引きついだ講座が現在もまだ複数あることをご存じですか?内容がいかに宣伝と違っても、金額がいかに相場より高くても、「講座が実際に開講されていて実態があるから詐欺ではない」と判断されることが多いのをいいことに、このような講座は法にも引っかからず行政指導にもあわず、およそあり得ない効能を謳って業界知識のない人を集め、大金を巻き上げています。
たまたまプロまであともう一歩だった人が受講してプロになったことを「実績」として宣伝
こうした”翻訳学校”の内容は動画での自習が中心で、サービス内容は極めて薄いにもかかわらず、たまたま独学でプロの領域に近い人も受講していたためプロになったケースがあります。このような人がひとりでもいると「効果が全くないとは言えない」と判断され、「誇大広告である」という訴えが「グレーゾーンである」と判断されてしまいます。SNSでは「誇大広告を展開する翻訳講座には申し込まないように!」と警告する翻訳者の投稿が相次いでいますが、そのような投稿に対しても「事実無根の誹謗中傷を行う人がいる」と”学校”側から抗議のメッセージが発せられる異常事態となっています。
実際に数十万円の受講料を支払った元会員から相談が寄せられている
会員が”学校”の内容に満足していれば周りがとやかく言うことはないのではないか、という意見もあります。しかし、実際に我々翻訳者のもとには、こうした”学校”に大金を支払ってしまったが「翻訳はとてもではないが簡単に稼げるような仕事ではなかった」「添削も返ってこないし質問にも返答がない。サービスがまともに提供されていない」「返金して欲しいと再三訴えているのに聞き入れられない」として、少なくない数の相談が寄せられています。
このような”翻訳学校”のおかげで業界関係者は実害をこうむっている
このような”翻訳学校”で翻訳どころか英語の勉強すら初めてのような人が付け焼刃の”テクニック“を習い(違法スレスレのものもありました)、にわか仕込みの「翻訳者もどき」が翻訳会社に大量の履歴書を送りつけたことで(何しろ会員は1000人を超えていたわけですから)、業界が一時、大混乱に陥りました。新規参入者を断る翻訳会社も出てきました。翻訳者の選考を有料化するところも出てきました。このようにして、本当に実力のある若手の翻訳者も道を阻まれる結果となっています。
また、そのようなにわか仕込みの翻訳者もどきが間違って選考に通ってしまうと、低品質の翻訳が納品され、その成果物をチェックする社内外の「翻訳チェッカー」が大変な思いをしてその低品質な翻訳をチェックすることになります。件の”翻訳学校”が出現した時期と同じ頃からあまりにも質の低い翻訳が回ってくることに嫌気がさして、「もう翻訳チェックの仕事は引き受けません」ということにしたフリーランスの人も増えています。これによって翻訳会社の中で社員としてこうした業務に携わる人々は終電まで残業しているようなこともあると伝え聞いています。このように、単に翻訳者たちが「プライドを傷つけられる」にとどまらず、実際に業務に支障が出ています。
当ブログでは、このような"翻訳学校"の被害に遭った人のための情報を発信し、コメント欄により情報交換の場を提供します。専用スレッドへは被害の実態などをお寄せください。管理人へは「連絡フォーム」またはLINEからご連絡ください。
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